『それでは出発します。』とカトーさん。乗っているのは我々夫婦のみ。『あれ?貸切ですか?』『そうですよ』他にもいらっしゃると思ってたので少し緊張していたがそれを聞いてだらんと両足をシートの前に投げ出す。『吉川様、本日の観光の予定ですがまずオークランドのシンボル、スカイタワーに行きます。そこでランチを御用意させていただいています。その後近くのメインストリートを散策し免税店でショッピングの予定となっております。』あたりまえだが礼儀正しい。恐縮してしまう。ワゴンは市街地へ。あ、右ハンドルだ。周りの車もほとんど右ハンドル。『HONDA』やら『TOYOTA』が目に入る。燃費がよくて安くて故障の少ない日本車が人気らしい。カトーさんがニュージーランドについて語り始める。『ニュージーランドにはもともとマオリ族という・・・』周りは緑が広がっていて気持ちがいい。牧場には白くうごめく何かの大群が・・・羊だった。カトーさんは続ける。『ここオークランドはニュージーランド第2の都市で・・・』外の景色は田園風景からかわいいおうちが立ち並ぶ住宅地へと変わっていく。ん、見覚えのある花が・・・桜だ!外は桜が満開だった。日本は9月でここは3月。春まっさかりだった。へぇ〜・・・感動のあまりしばし言葉を失う。でも花見をしている人はいない。
南半球最高を誇るスカイ・タワー。高度328mからの景観は圧巻!!
そんな習慣はこっちにはないらしい。あ〜もったいない。住宅地を抜けるといよいよ街中へやってきた。今までちらほらしかいなかった人がわっと増える。白人、黒人、アジア系・・・人種のるつぼだ。あ、日本人多いじゃない。『あれは韓国人ですよ。』とカトーさん。2年間もここにいると日本人と韓国・中国人の区別がつくらしい。それにしても・・・3月とはいえまだ寒いのだろうか。長袖長ズボンは当たり前。あろうことかマフラーをまいている人もいる。妻はTシャツ短パン、サンダルの夫の姿を見てくすくす笑っている。うーん、寒いのか?ちょっと心配・・・。
繁華街を走ること数分。例のタワーが見えてきた。た・た・たかい!首が痛くて上までは見れない。地下6階の駐車場にワゴンを止め高速エレベーターで一気に高度300mまで上がる。所要時間たったの50秒!!
 展望台はぐるりとドーナツ。ワゴンからは天にも届かんばかりのビル群がここからじゃミニチュアだ。外の景色はとてもきれい。長いフライトの疲れを癒してくれる。ガラス窓沿いに歩き始める。数メートルも歩かないうちに地面にガラスのフロアーが!!もちろんその向こうにはミニチュアのビルが・・・鳥肌が立つ。『このガラスは厚さが 30mm。水族館と同じくらいらしいですよ。まず割れませんよ。』と微笑むカトーさん。30mmは3cmやん!80kgのおれを支えきれるのか?そんな心配をよそに二人合わせて200kg位の老夫婦がガラスにのって『haha!!』とか言ってる。あ、大丈夫そう・・・そぉ〜っと乗ってみる。大丈夫やん(あたりまえ)。余裕が出てきて座り込んで下界を覗き込む。うーん、一生に何回かしか見れない景色だ。大満足。大満足したら腹が減ってきた。カトーさんがそれを察したのか『そろそろランチにしましょうか?』うーん、いい人だ!
高度300mからの景色は圧巻!
同い年とわかって急に和みだす。『お仕事は?』『見えないでしょうが医者です。』びっくりしている。意外だったらしい。『お医者様、弁護士のご夫婦をご案内することは多いんですけど全くイメージが違いますね。失礼ですけどとても和みます。』デザートのケーキを平らげスカイタワーを後にする。さっきまでミニチュアだったビルが超高層ビルにもどって目の前に立ちはだかる。食後は繁華街を散策することになっていた。ワゴンで免税店を訪れる。初めてオークランドの外の空気を味わう。さ・さ・さむい!!どこが春だ?冬だ!!小走りで店に入る。免税店・・・エルメス(これしか覚えてない)云々、高級ブランドの店が多数入っている。我々夫婦はこういうものには全く興味がなかった。30分後に待ち合わせだったがすぐに飽きて羊のぬいぐるみとかチョコレートやビーフジャーキーをみてはしゃぐ。20分もして待ち合わせ場所に行くともうカトーさんがいた。『こういうところは吉川様には合わなかったようですね。どちらかというと街中より郊外へドライブとかの方がいいですか?』そのとおり。ワゴンは繁華街を抜け海岸沿いへ。大きな橋をわたって30分くらいで広いビーチについた。『ミッション・ベイ』というところ。ビーチの砂は真っ白できれい。そばにはきれいな芝生がしきつめられた公園があり、がきどもが寒い中を走り回っていた。きれいな公園。ごみがない。カトーさんにたばこをたかり一服する。その辺に生えてる木はCMでお馴染みの『この木何の木』の木に似ている。きれいな緑色だ。フィルターまで火がきたところで次の場所へ向かう。今度は山へ向かった。オークランドには10個位の死火山がありそれがそれぞれ丘のようになっているらしい。そういえばスカイタワーからも地面がぽこぽこ盛り上がってるのが見えた。火山の跡だったようだ。けっこう急な坂をのぼってやがて頂上につく。けっこう高い。ワゴンから降りると・・・う、寒い!周りの観光客は冬の格好だ。真夏バージョンの自分が恥ずかしい。景色がいい。はるか遠くにスカイタワーが見える。やっぱり高い。ドラゴンボールのピッコロのいた塔を思い出す。空気がおいしい。がなんせ寒い。すぐに限界がきた。急いでワゴンに逃げ込む。時計を見ると昼の1時。えーと3たして・・・夕方の4時。パペーテ行きが17:15なのでちょうどいい時間だった。ワゴンは再び空港へ向かった。最初はニュージーランド経由と聞いてタヒチが1泊減ってがっかりしたものだったが、さすが日本最大の旅行代理店JTB。ナイスフォローで充実したハネムーンのスタートをきることができた。行きの緊張した雰囲気とは違って帰りのワゴンの中は和やかな雰囲気で会話も弾む。BGMの洋楽が心地よい。やがて空港へ。入り口の前で惜別の一服をする。ここでお別れかとお礼を述べると一緒に中へ入り出国カードを一緒に書いてくださりチェックインもしてくれた。二人だけだったら・・・想像したくない。現地時間で16:30。我々は出国ゲートをくぐった。振り返るとカトーさんはまだいた。手を振る。丁寧なお辞儀が返ってくる。また手を振る。今度は手を振ってくれた。うれしかった。