戻る

【カーテンの寿命を左右する、太陽光による変褐色や脆化
東リ株式会社(2000/06/11) 東リHPより抜粋                    

カーテンの寿命を語るには、生地の脆化(もろくなること)と、光による変褪色のふたつのキーワードが代表的です。
 古代裂れのように時の流れによって布がボロボロになる状態を、脆化といいます。でも、一般の住宅で使われているカーテ
ンで問題になるのは、太陽光で変色、あるいは色褪せてしまう変褪色によるものだと思われます。
なぜ変褐色するのか。
 原因は、太陽光に含まれる紫外線によって、カーテンに使われている染料が光化学反応をおこすことが原因です。つまり、
光に接した時から、変褪色は徐々に進行しているわけです。でも、全体にムラなく進行している段階ではわかりません。とこ
ろが、カーテンに縫製されて窓際につられると、谷の部分と山の部分で、光のあたり方に差が生まれてきます。窓際の山部分
には大量の光があたり、変褪色も進みます。逆に谷の部分は陰になって、変褪色もそれほど進みません。こうして、色の差が
でき、変褪色していることが顕在化してしまうわけです。

●使い方や素材によって変わる変褐色の進行状況。
 生地の変褪色は、素材の種類と、色、そして使用されている染料によって異なります。一般的にはポリエステルやアクリル
の方が綿やレーヨンよりも、濃色の方が淡色よりも変褪色しにくいと言えます。染色方法では、染料を使用したものよりも、
顔料を使用したもののほうが変褪色しにくくなります。ポリプロピレンや原着ナイロンは、この顔料を使っています。

■カーテン、カーペットに用いられる主な繊維素材の耐光性能と着色方法
繊維素材 着色方法 耐光性
変褐色の程度(染色堅牢度) その他の耐久性
綿

綿染め・糸染め・後染め

黄変、
強度低下あり

ウール

綿染め・後染め

紫外線で黄変、
強度低下あり

レーヨン 綿染め・糸染め・後染め

強度やや低下あり

ナイロン

原着・綿染め・糸染め・後染め

紫外線で黄変、
強度低下あり

ポリエステル

原着・綿染め・糸染め・後染め

強度低下少

アクリル(糸)

原着・綿染め

強度低下少

ポリプロピレン

原着

強度低下少


※原着→繊維になる前のドロドロに溶けている状態に、顔料を練り込んで着色する方法。原料段階から顔料によって着色するので、繊維の奥まで染
めることができ、太陽光や塩素系漂白剤などの影響を受けにくく、褪色・変色しにくい。
※先染め→原糸の段階で染料によって着色する方法。染料を用いていることも、原着のものよりは褪色しやすい。
※後染め→カーテン布やカーペット原反など、生地ができあがった状態で染料によって着色する方法。先染めよりも褪色しやすい。
●生地の変褐色は、耐光堅牢度という言葉であらわされます。
 生地の変褪色をみる目安として一般的なのが、JIS L 0842(カーボンアーク灯光に対する染色堅牢度試験方法)に基づいた等
級です。一級から八級まで設定されており、八級がもっとも耐光堅牢度(変褪色しにくい)に優れています。日本では、カーテ
ンやカーペットは、耐光堅牢度四以上であることが、JISで定められています。
 それぞれの生地の耐光堅牢度は、サンプル帳などに記載されています。
●耐光堅牢度に影響を及ぼす様々な環境。
 同じ耐光堅牢度の生地でも、場所や方角、つまり日照条件によって、実際の変褪色の状況は変わってきます。例えば、耐光堅牢度四のカーテンは、本来5年は変褪色がわからないものなのです。ところが、九州や沖縄など日射しの強い地域で、南側につられていて、わずか3年で色褪せてしまったという例もあります。
■設計用全天空照度
条件
全天空照度(lx)

とくに明るい日
(曇天、雲の多い晴天)

50,000 lx

明るい日 普通の日 暗い日

30,000 lx
15,000 lx
5,000 lx

非常に暗い日
(雷雲、降雪中)

2,000 lx

快晴の青空

10,000 lx
(出典:「建築環境工学」足立哲夫・他著 井上書院)

■日照時間の月別平均値
地点

1月

2月

3月

4月

5月

6月

7月

8月

9月

10月

11月

12月

札幌

106

124

168

198

221

205

194

184

184

167

115

96

金沢

64

88

146

181

213

160

180

212

151

150

118

78

東京

184

163

179

166

194

134

154

187

127

134

148

173

大阪

149

143

178

184

207

162

194

223

166

170

157

151

福岡

104

118

174

175

196

164

189

221

172

189

153

118

熊本

132

140

181

173

191

156

191

223

182

195

171

144

高知

197

181

203

181

188

150

189

213

171

187

185

193

(統計期間:1951年から1980年までの平均値/時間)(理科年表より抜粋)

● 時間によって脆くなっていく脆化。
 時間の経過によって、繊維の力が低下する現象です。これは、繊維の種類によって変わります。一般的には、天然繊維より
も合成繊維のほうが強く、天然繊維の中でもレーヨンよりも綿のほうが強く、合成繊維ではアクリルが最も強いといわれてい
ます。また、合成繊維は、砂漠のようによほど激しい条件でなければ、10年以上は使用できると言われています。もっとも、
特殊な構成や加工を施した場合はこの常識があてはまらないので要注意です。耐光堅牢度のように、テスト方法が確立されて
いなく、目安となるデータのないのが現状です。

●苛酷な使用環境でできること。
 色々な環境条件によって左右されますが、例えば、脆化しにくい合成繊維の中でも、変褪色に強いポリエステルやアクリル
を選ぶという方法もあります。また、どうしても天然繊維をと言う場合には、脆化をさけるために、裏地縫製を施すのも対策
のひとつです。