2003年11月に記した「正義が通る学級づくり」覚え書き 内山義朗
「善」行為が広がる学級と「悪」行為が広がる学級がある。めざすべき学級は当然な
がら前方。学級崩壊は、後方にあたる。「いじめ」のはびこる学級も後方に属する。
『 正義+勇気=善 欲望+勇気=悪 』
道徳教育改革集団代表の深澤久氏から学んだ道徳公式である。第3回道徳授業改革
セミナーIN鹿児島における講座での発言。
この公式をベースに、「子どもたちを楽しく鍛え」「子ども個と心の糸を編む」手法を提起
する。
1「善と悪」の授業
「善」行為が広がる学級と「悪」行為が広がる学級があります。めざすべき学級は当然なが
ら前方。学級崩壊は、後方にあたる。「いじめ」のはびこる学級も後方に属する。「善」行為
が広がる学級づくりの一つのコースを提起する。まずは、次のような授業を行う。
@人間の行為は三つに分類できます。
世の中・人々に対しての「善」行為
世の中・人々に対しての「悪」行為
世の中・人々に対して「他(どちらともいえない・わからない)」行為
Aあなたが、これまでにやった「善い行い」を書きなさい。「□を大切にする行い」の□に当て
はまる言葉をできるだけいっぱい書きなさい。
・「列指名→言いたい人」の順で発言させる。
Bあなたが、これまでにやった「悪い行い」を書きなさい。
・「発言したい人」に発言させる。
C今、発言した人たちは、みんな一つ善い行いをしましたね。何でしょう?
・自らの「悪」行為を正直に話した。
D善い行いを式で表します。○○には漢字が入ります。何が入りますか?
板書 善=○○+勇気
・正義
E悪い行いを式で表します○○には漢字が入ります。何が入りますか?
板書 悪=○○+勇気
・欲望
F人間の行為は三つに分類できます。
善=正義+勇気
悪=欲望+勇気
どちらともいえない行為=「欲望のみ」か「本能」「条件反射」
2「正義と欲望」の授業
以上のような授業をやった上で、日常の学校生活の中で起こる「善」行為や「悪」行為に目を
向けさせていくのが一つの方法。例えば、つぎのような実践。
10/08(WED)記
2組が芋を煮て分けてくださった。学年園で栽培した薩摩芋。
6校時前に2組の子どもが届けてくれた。出来立て熱々の薩摩芋。
6校時は、総合的な学習の時間。子どもたちは芋を食べられるとウキウキしている。
単に食べて「おいしかった」だけでは、授業にならん。行儀良く食べて「おいしかった。2組さん、
ありがとう。」だけでは、何とも勿体ない。
私は、開始時刻から2分30秒間黙っていた。わざとテスト採点の記録をしていた。
ウキウキ気分の子どもたちが徐々に静かになった。私がわざと始めないのを悟って、おしゃべり
している子に注意する子も中にはいた。
全く音無し状態になったのが開始2分30秒後。やっと私は口を開いた。
「開始時刻から2分30秒が経ちました。なぜ、担任は授業を始めなかったのでしょう。ノートに書
きなさい。」
書き始めて2分後。
「書けた人から自由起立発言で、どうぞ。」
・授業が始まってもおしゃべりしている人がいた。
・手遊びしている人がいた。
・授業の準備をしていない人がいた。
・ふざけている人がいた。・・・・
「残念ながら正解は出ていない。」
・自分できちんとできるにも関わらず、注意を受ける人がいた。
・みんな授業が始まっているのに静かにできる力をもっているのに、しない人がいた。
惜しい意見はあった。しかし、正解はでなかった。正解を告げた。
「殆どの人は静かだった。注意した人もいた。しかし、2分30秒もかかるまで静かにさせられなか
った。30数人もいながら。」
「授業開始時刻になってからもお喋りを続けるのは正義か欲望か?」
・全員が「欲望」に挙手。
「正義を学び合うために一つの教室にいるんだ。担任に頼り切っているようでは、まだまだアマイ。」
* ここで、もう一つ別な発問をしノートに書かせた。そして、全員発言。が、内容は伏せておく。こ
こでの子どもたちの発言は、どれも重要。近々言った内容を実行することになるだろう。
さて、いよいよ芋を取らせる。
「一人1個ずつ取ります。上の方から順に取っていきます。あまるかもしれない。その時は、小さい
のを取った人に2個目をあげよう。1列からか8列からか前の人のじゃんけんで決めます。勝った列
からにします。」
さっそく数人が声援を発した。なかでも、最も張りのある元気な声を発した子を立たせた。はっきり
と聞き取れたからだ。そして、問う。
「今、何といいましたか?」
・○○君、絶対負けるな!
「負けると何が困るんですか?」
・・・びびって声無し
「当ててさしあげよう。○○君が勝てば、早く取れる。人より大きいのが取れる。」
「この考えは正義か欲望か?」
・全員「欲望」に挙手。
「もしかしたら、下の方に大きいのがいっぱいあるかもしれないよ。その時は『○○くんが負けたから
大きいのが取れなかった』と文句を言うわけじゃああるまいな。そう考えると、『○○くん、がんばれ』
は余計なひと言です。○○君にプレッシャーがかかるだけだ。」
かくして全員が平和に芋を手に入れた。食べる前にひと言。
「何か言いたいことはありませんか。」
数人が挙手。一人を指名。
・2組さん、ありがとう。
「3組が植えて収穫し、2組が煮てくれた芋だ。『おいしかった。ありがとう。』だけではかっこわるいね。
大丈夫。学校園には、もっと沢山の薩摩芋がある。草取りなど仕事は山ほどある。」
ここで、数人が「エ〜、いやだあ。やりたくない。」などの声。チャンス。
「『いやだあ。やらない。』は正義か欲望か?」
・全員が「欲望」に挙手。
そして、みんな平和な表情でおいしそうに食べていた。以降、みんな、にこやかな表情で食べていた。
お味は、好評だった。
3「金魚の糞」の授業
すべては一人から始まる。
「授業開始時刻に後れる子」は、一人から始まる。「あいつ生意気だ。シカトしよう。」「あいつ、からかうと
面白いよ。」悪いことは、一人から始まる。一人から出発する「善」行為を広げ、「悪」行為に対する批判力
を育てれば「正義と勇気」が広がる。
放っておくと、追随する子らが出てきます。私は、深澤久先生の言葉を借りて、「金魚の糞」と称している。
ここを断ち切るのが重要。気づくまでが長くなればなるほど、断ち切るのは困難になる。「金魚の糞」が長く
なる。これを断ち切るには時間がかかる。
完璧な人間は存在しない。誰しも長所と短所をもっている。
要は、「良い点を学び追実行していくか」「悪を学び追実行していくか」の分かれ目が集団にはある。欲望
で誰かの追実行をしていく行動を私は「金魚の糞」と呼び、断ち切る努力をしている。
例えば、一人が紙飛行機遊びを教室で始めた。一人でやる分には害は少ないだろう。これが、じゃんじゃ
ん増えていった。
「数人かが『教室でやると危ないから止めてよ。』と注意した。でも、止めてくれない。」
相談に来た。私は、さっそく次の時間、相談内容を授業にかけた。題して、「金魚の糞になるな」のメッセー
ジを込めた授業。内容は、ご想像にお任せする。
4 責任をとらせる
「他者の人権を侵害する失敗」には責任をとらせる。「行為に対応する責任」をとらせる。加害者が「責任の
とり方を知らない」時は教える。みんなにも考えさせるよい機会。
5 成長を実感させる
「ほら、やればできたじゃないか。」
「こんなに伸びたじゃないか。」
「りっぱになったなあ。」
「学級担任を超した。」
こんな一言を言うために様々な手法をつかうのだ。成長を実感させる。成長の事実を子どもとともに創り出し、
共に喜ぶ。