七塚小学校いじめ事件の判決文を使った授業
1 指導のねらい
(1) 判決文を読む活動を通して、「いじめ」とはどういうものかを知る。(「いじめ」の定義と、その内 容を知る。
(2) 判決文をもとに「いじめ」の要因を検討し、誰が何をすれば防ぎ得たのかを考える。
2 指導計画
時 |
学習テーマ |
学 習 活 動 |
1
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「いじめ」とは、どういうことか。
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・ 判決文「2 事件の発生」「1 事件までのこと」の部分を 読む。
・ 感じたことを書き、話し合う。(「いじめだ。」「ひどい。」「か わいそう。」などの意見が出される。)
・「いじめ」の定義を知る。
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2
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「いじめ」の要因と解決法を考える。
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・ 判決文「1 事件までのこと」「2 事件の発生」の部分を 読む。
・「悪いのは誰か」を話し合う。(「1番目に悪いのは誰か」「2番 目に悪いのは誰か」「次に悪いのは誰か」・・・・という問いに ついて考え、要因の洗い出しをする。加害者はもちろん、傍観 者も含む事件に関わったと考えられるほとんどの人が出され る。)
・「誰がどうしていれば防げたのか」を考え、検討する。(ノート に各自考えを書いてから発表する。そして、討論。)
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3
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責任のとらせ方を考える。
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・「事件の後、誰が何をすればよいのか」を話し合う。(考え を 各自ノートに書いてから発表、検討。)
・ 判決文「3 事件後」の部分を読む。
・「誰にどんな責任をとらせるべきか」を話し合う。(考えを各自 ノートに書いてから、発表、検討。)
・ 判決文「4 裁判所の判断」の部分を読む。
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展開例を右ページに別掲
3 展開例 ( 2 / 3 時)
主な発問と子どもの予想反応 |
時間 |
留 意 点 |
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12分
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・ 判決文「1事件までのこと」 「2事件の発生」の部分を印刷した資料は、第1次で配布済み。
・ ノートに各自考えを書かせる。約5分。
・「1番悪いのは誰ですか」「2番 目に悪いのは誰ですか」「次に 悪いのは誰ですか」・・・・と 問いながら、出された意見を板書していく。意見が出尽くすま で続ける。
・ 理由が言える人には、理由ま で発言させる。
・「二つ書いたらノートを見せに 来なさい」と指示する。
・ 早く持ってきた数人に意見を 板書させる。10程度。
・ 後からノートを見せに来た人 の意見は、後ほど口頭で発言さ せる。板書したものと別な意見 があれば。
・ 書き始めて10分後、まだノ ートを見せに来ていない人がい れば、「書けた分でいいから見 せに来なさい」と指示する。
・ 板書した人に説明させる。
・ 板書する。
・ 出された意見が「いじめ」防 止策になっているか否かを検討 させる。
・「おかしい意見はありませんか」
の問いを出して検討させるのも
ひとつの方法。
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指示 全員起立。「1事件までのこと」「2 事件の発生」
を1回音読しなさい。読み終わったら腰掛けなさい。
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| ・ 各自1回音読。 |
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発問・指示 悪いのは誰か。すべて書き出しなさい。理
由も書きなさい。
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8分
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・ いじめた人。
・ 見て見ぬふりしている人。
・ 学級担任。
・ 学校長。
・ いじめた人の親。
など。
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発問・指示 誰がどうすればよかったのか。ノートに書
きなさい。
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25分
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・ いじめている人が、やめればすむこと。
・ 見ている人がやめさせるか、まわりにいる教職員や親た ちに相談すればよい。
・ 学級担任が、もっとしっかり「いじめ」が起きないよう に目をかけておくべき。
・ いじめられたら、自分の親に相談する。そして、学校を 休めばいい。
など。
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指示 黒板に書いたことを説明してください。
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指示 別な意見がある人は、発表してください。
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指示 座席をコの字型にして、討論しなさい。
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4 授業中継 (四角囲みは、授業者の発問・指示。・は、おもな発言内容。)
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全員起立。判決文の「事件前」と「事件の発生」を一回音読します。読み終わったら腰掛けなさい。
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全員が腰掛けてから、言う。
約三分後、「列指名で10人」「別の意見」の順で発言させた。A以外、判決文中に登場する人物のほとんどが出された。「学級担任」はもとより「学校長」や「いじめを見ていて注意しなかった人」も出された。
事件に関わった人の洗い出しのために、次の問を立て続けに出した。
以下、出尽くすまでこの問を続ける。出された意見は、まとめながら短く板書していった。
・ C君。P先生。R先生。
・ 校長先生。C以外のいじめグループ。
・ 見ていた人たち。同級生。
・ いじめた子を育てた親。
・ A君。(異論も出された。)
・ Q先生ら先生たち。(異論も出された。)
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誰がどうすればよかったのか?ノートに二つ書いたら見せに来なさい。
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早く書いて来た子12人に意見を一つずつ、短く板書させた。他の人の意見もおおよそ、この中に含まれていた。
全員のノートに目を通した後、板書されたものを読んだ。次の12の意見。
( 1)見ていた人が、とめればよかった。
( 2)いじめグループやその親の方からも、とめる。
( 3)校長先生やP先生が、A君にいじめをした人をもっと厳しくしかる。
( 4)A君が、いじめられる前にあやまる。
( 5)A君が、授業態度をよくすればよかった。
( 6)校長先生が、全校朝会で言ったらよかった。
( 7)いじめが起きたことを見ていた人は、先生に言えばよかった。
( 8)校長先生が、みんなに注意すればよかった。
( 9)いじめグループが、仲良くしようと思ってそれを実行すればいい。
(10)いじめた人の親に先生らが言って、親がいじめた自分の子を注意すればいい。
(11)校長先生が、いじめたひとに、絶対にいじめをしないように言い聞かせればよかった。
(12)A君が、給食時間に鼻水を垂らしながらいかなければよかった。
読み終えた後、討論開始。一人一人起立して、発言していく。
いわゆる「指名なし討論」。指名は、ない。この方式が1番自然な討論のやり方だと思う。
以下、子どもたちが、次々と立って発言していく。授業者は目に付きにくい隅の方で腰掛けて、発言を聞く。
約20分間、子どもたちの討論が続く。
・(4)は、正しくない。鼻水を垂らしながらC君に近寄ったのは謝った方がいいのかもしれないが、足を かけられたりしたのはA君が悪いんじゃない。
・(5)は、いけない。A君にはA君のことがあるし、A君に病気があれば、それは本人がすぐに治せるこ とではない。
・(9)の「いじめグループが仲良くしようと思って、それを実行すればよい」は、それができないから、 いじめに巻き込まれたんだから、おかしい。
・ だから、なかよくしようと思って実行すればいい。
・ 仲良くしようと思っていれば、いじめは起きない。
・ A君が、給食時間にC君に近寄らなければいい。
・ 一人一人の体質があるのだし、席を離れて話したらA君が悪いというのではない。
・ 賛成。もしかしたら、A君がC君の所に席を立ってきたのには理由があって、何かを言いに来たのか もしれない。
・(12)の「・・・行かなければよかった」という考えは、「なら、教室にA君が来なければよかった」 のような考えにもなるから、おかしい。
・ 判決文にもあるように[Q先生は毎日児童全員に、A君が教室のルールを守らなくてもそれを理由にい じめてはならないと話したとあるから、たたかないでも、先生が注意しているのだから、よかった。
・ 私も(5)に反対だ。A君は普通の人と違うところがあるみたいだから。人にはできないこともあるの だから、あまり言わない方がいい。
・ 反対。Aが授業態度をよくすればよかった。OOさんは難しいことだと言ったけど、誰でもできるよう な、幼稚園生でもできるような簡単なことだ。
・ A君が病気で、そんなことできない人だったら無理だ。
・ 今さっき,OO君が言ったのは、おかしい。言い換えれば、障害児学級の人に授業態度をよくしろと言っ ているのと同じだ。
・ OO君に反対。判決文に「A君は、ふだんから動作が遅く話し方も上手ではない」とあるから担任の先 生が授業態度が悪かったら悪くないように教えていけばいい。
・ 学校は、それをよくしていくためにあるのだから。教えを通して授業態度その他をよくして人生とかを 変えていけばよい。
・ 授業態度だけで友達関係がうまくいくもんじゃない。
・「A君はふだんから・・・・・」と書いてあるのだから、学級でもできないこともあるんだから、A君も
もできないことだってあるのだから、よくすることはできない。
・「A君が授業態度をよくすればよかった」より「いじめグループが仲良くしようと実行する」方が無理。
ここで、終了3分前。
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まだ意見がある人、起立。一人20秒以内で言いなさい。
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こう指示し、一人ずつ言わせた。
・(1)の「見ていた人は、とめればいい」は見ていた人の名前は何も書いていない。
・((9)に対して)C君はA君にうらみをもっているのだから、絶対に仲良くしようとするはずがない。
・(5)の「Aが授業態度をよくする」は、Aが病気だったらどうしようもないから、反対。
・ これに関係した人は(アルファベットで名を記した人以外)いないけれど、見ていた人はいるはず。
・(5)には、反対。すぐにできることではない。
最後に、次のことを尋ねた。そして、挙手により人数確認をして、授業を終えた。
8人が、挙手。
ほか全員(多数)が挙手。
5 授業者より
(1)「いじめ」に正対する授業には、これまで何度も取り組んできた。研究授業として実施したことも幾 度もある。マル道(深澤久氏が代表で道徳授業改革を進めてきた集団・全国ネット「道徳授業記録」 の略称)の全国合宿に授業記録を持ち込んだこともある。
当時は、「いじめ」を扱った新聞記事や書籍から資料を引っぱり出してきて使うことが多かった。 具体的な「いじめ」の事実を知らせた上で、「いじめ」行為を検討させたいと考えてのことだ。子ど もたちは、「いじめ」の事実の資料に目を通すことで、確かに真剣に考えていた。
しかし、何人かの方から指摘を受けた。
「亡くなった本人や家族たちのプライバシーは、どうなるのか。また、記事や書物に記された内容は、 公的に立証された内容とは、限らない。」
「立証された内容」であり、「公開を原則とする裁判」から導かれたものである判決文を使うのは妥 当である。ただし、判決文資料は、文章の内容の読みとりが、子どもたちにとって、困難だ。通読・ 言葉の意味調べ・内容の理解だけでも、多くの時間を要する。さらに、わかりやすい文章に改善して いくことが課題である。子どもたちが、自力でさっと読めるくらいに。
(2) 第2・第3時の中で、「いじめ」解決の方法に関わる発問を3回した。
@ 事件前・事件時に、誰が何をすればよかったのか。
A 事件後、誰が何をすればよかったのか。
B 誰にどんな責任をとらせたらよいのか。
このうち二つは、討論させた。一つは、発言のみ。
討論をさせると、どれも簡単にはできそうにない、というところが見えてくる。どこかの時点で、み なが納得できるような解決策がとられれば、関わった人たちにとって、それなりに今後にいきる経験 にはなる。が、解消しえないほどの「いじめ」であれば、関わった多くの人が不幸な思いを今後も引き ずっていくことになる。
そこに気づくための授業過程を組んだ。しかし、判決文の内容の理解・討論とも、かける時間の設定 低が短かったため、消化不良だったのが反省点である。三時間構成で授業を計画し、実施した。が、こ こに示した内容をつい実践する場合には、四時間計画にすることをおすすめする。
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