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 霧島は日本神話の中の天孫降臨神話にゆかりが深い地です。『古事記』によれば,ニニギノミコトは三種の神器をたずさえ,天岩戸神話で活躍したアメノコヤネノミコト,フトダマノミコト,アメノウズメノミコト,イシコリドメノミコト,タマノヤノミコトの5神にともなわれて,「筑紫の日向の高千穂のくじふる嶽」に降臨しました。
 霧島連山の第2峰,高千穂峰は,この天孫降臨の霊地に擬せられ,頂上には,いつのころに立てられたとの記録はないものの,神が官を営んだしるしとされる「天の逆鉾」が立っています。
 『日本書紀』には「日向襲高千穂峰」と峰の一字がみえますが,降臨の地はどこなのかをめぐって,宮崎県の高千穂卿とする説と,霧島の高千穂峰とする説に分かれます。
 『日本書紀』の襲は,『古事記』の国生み神話にある「熊曽国」と同じで,今の熊本県の南部から鹿児島県にかけてのあたりをさす地名です。高千穂峰山頂からの眺望は素晴らしく,明和3年(1766年),霧島に登った医者・歌人の橘南谿は,その紀行『西遊記』に,
四方豁達(かつたつ)にうちはれ, 薩隅日の三州, 一望の中に入りて,
奥州波涛の如く, 大海は青畳をしきたる如し。
と,白い煙のたつ桜島山,屋久島,種子島,開聞岳,雲仙,英彦山など,九州の主だった山並みを一望し,日向灘から東シナ海に広がる海を眺めつつ,「景色無双,筆につくしがたし」と,その素晴らしさに感嘆しています。
 高千穂峰から見る太陽は日向灘に昇って東シナ海に沈む。天孫降臨の地をめぐり霧島の高千穂峰説と,宮崎県の高千穂卿説があることはさておき,「朝日の直刺す国,夕日の日照る国なり」とある『古事記』の描写は,日の出から日没まで,太陽の動きのすべてを見ることのできる高千穂峰を連想させます。
草木すらはえない鋭くとがった頂上をもつ円錐形の美しい山容と,四方を一望する眺望があいまてば,上古人でなくとも,いかにも国を統べるにふさわしい場所との思いが浮かぶことは,容易に想像できます。
 天孫降臨の地をめぐるふたつの意見は,国学の隆盛を背景に,江戸時代の文人たちも関心をよせるところであったらしく,先の橘南谿は,高千穂峰に登って,
神書にいふ山これなり。別に近世の人の高千穂峰という山,この国(日向をさす)にあれども,ことの外小さき山にして,神話にしるせる山にあらず。
 高千穂峰といふは,この霧島山なること種々確かなる証拠あり。 この山に登るものは,おのずから知るべし。
と,登山の感激をもとに,霧島説に軍配をあげています。

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