海音寺潮五郎と大口

海音寺潮五郎「二本の銀杏」の舞台は、幕末期の薩摩、肥後と国境を接した赤塚郷というところである。
主人公の上山家の当主、上山源昌房(うえやまげんしょうぼう)。は、農民達が苦しい生活のため逃散する状況を見て、当時の薩摩藩家老・調所笑左衛門(ずしょしょうざえもん)を味方に、様々な改修工事を実施する。
しかしその一方、代々赤塚郷の郷士頭を勤める北郷家の当主・北郷隼人介(ほんごうはやとのすけ)の妻、お国と道ならぬ恋に堕ちる。
赤塚郷にある北郷家と上山家の両家の庭には、樹齢二百年くらいの雄、雌の銀杏の巨木が、雄木は北郷家に、雌木は上山家にそれぞれあった。物語中、この二本の銀杏は、源昌房とお国の関係を象徴し描かれている。
作品は、物語として一応の完結をみるが、実は、壮大な三部作の第一部で、この後に「火の山」「風に鳴る樹」と続く。
源昌房の家として舞台となっている、西原八幡宮に到着。
仁王像が立つ入り口は狭く、ここからは歩いて向かう。
西原八幡は、島津忠明・明久親子を祀っている。また、昔から武の神で、境内で郷士たちの鍛錬の場でもあった。
泉徳寺へ。

ここには、「二本の銀杏」に登場する銀杏のモデルだと思われる、雌木の大銀杏がある。
堀之内良眼房(ほりのうちりょうげんぼう)のお墓。
堀之内良眼房は、上山源昌房のモデルとなった人物。隣には妻らしき人のお墓が並んでいた。
大口小学校の敷地内から、大口城跡へと行くことができる。石の階段が整備され、今では子ども達の遊び場となっているようだ。
物語中では、ここらで源昌房とお国が密会していたらしい。
大口ふれあいセンター。

二階にて、海音寺文庫コーナーを見学。海音寺作品の他に、直筆の掛け軸など、海音寺ゆかりの品や写真などが展示してあった。
ブルーベリーつみとり観光農園にて、歌人の宮原望子さんのお話を聞く。
一面、ブリーベリー畑。
きりりと美しい初夏の大口。
昭和二九年頃の復元時に、木片の裏に「その時 座主は大きなこすてをちやりて 一度もしょうちゅうを下されず候 何ともめいわくな事哉」という、大工が書いたらしい文句≠ェ発見されている。

西原八幡宮の方が、小説の舞台にもなっているのだが、注目度は郡山八幡宮の方が数段上である。
赤の鳥居が草木の緑によく映える。
曽木の滝にある良眼房の碑。

滝を見下ろすような場所に、堂々と位置している。
東洋のナイアガラと呼ばれる曽木の滝。

前日の雨のおかげで大迫力!
滝から一.五キロほど下流にある曽木発電所遺構。

鶴田ダムがつくる大鶴湖に水没している発電所が見られる。明治四二年に建設された、レンガ造りの水力発電所である。この日も、壁など建物の輪郭が現れていた。水量によっては、完全に水没する日もあるようだ。