2004年5月 |
二人ともどこだ〜〜〜〜???
日課になっているお勉強をすませた悟飯が、庭に出て伸びをしていると、背中に悟空を寝転ばせた筋斗雲がすすーっと近付いてきた。 「お…とぅ…さん?」 悟飯の頭の上で静かに止まった筋斗雲に首を傾げながら悟飯が声を掛けると、その声でひょいと悟空が起き上がった。 「お。もうべんきょ終わったのか?悟飯?」 「やっぱりお父さん。――― うん。終わったよ」 その台詞に悟空の目がきらりと光った。 「そっか。なら遊び行こうぜ。ちょうど退屈してたんだ」 「いいけど…ドコ行くの?」 「今いっちばんキレイなとこだ」 「いちばんきれいなとこ?」 悟空の台詞だけでは判らない悟飯が首を傾げて訊き返すと、悟空はにっこり笑って言った。 「まあ、いいから早く乗れ。チチに見つかったら行けなくなるぞ」 「あ、うん」 悟空に抱え上げられて乗った筋斗雲が飛び上がるか飛び上がらないかという瞬間に。 「悟空さー」 「あ…」 悟空の台詞どおり実にタイミングよく訊こえてきたチチの声に、悟空は悟飯に向かって得意気に笑いかけると、 「ほらな。――― よし、筋斗雲。このまま行っちまおうぜ」 ☆ 「悟空さー。悟飯ちゃぁーん。どこいるだー?」 チチの声に悟飯が堪らずくすくす声を漏らす。 「こら、悟飯。声出したらなんにもなんねぇじゃねぇか」 「だってお父さん、かくれんぼしてるわけじゃないのに」 「そりゃそうだけどさ」 小さな声で悟飯をたしなめる悟空もその実、やっと笑いを堪えていたのだ。 悟飯が声を漏らさなかったら悟空の方が我慢できずにいたかもしれない。 「こんなにキレイなんだから、チチも上見上げりゃいいのになぁ」 「そうだよねぇ。そしたらボク達のことも見つけられるのに」 チチを見下ろして二人は囁きあう。 頭の上でそんなことを言われているとは知らないチチは、溜息を吐きながら呟いた。 「おっかしいなー。たしかに筋斗雲がこっちの方に飛んでった気がしたんだけど…」 空に浮かんだ筋斗雲のあとを追い掛けて森の中に入ってきたところまではよかったのだが、繁っている枝の合間に上手に隠れている二人を、チチはなかなか見つけられずにいたのだ。 「ねえ、お父さん。こんなキレイな景色見られないなんて勿体ないからお母さん呼んであげようよ」 しばらくして悟飯が悟空を見上げて言った。 「そうだな。せっかくだから三人で空の散歩でもすっか」 「うん!」 悟空の台詞に大きく肯いた悟飯は、 「おかぁ―――さん!」 「え?――― うわ……」 頭の上から降ってきた声に空を仰いだチチの目に、太陽の光を反射させて眩しく光る緑が飛び込んできた。 と、同時にチチの頭近くまで筋斗雲で降りてきた悟飯がいきなりジャンプして叫ぶ。 「お母さん!」 「悟飯ちゃん!?」 そんな悟飯を慌てて受け止めながら、もう一度空を見上げたチチが呟いた。 「キレイだなぁ、悟飯ちゃん」 「そうでしょ?お父さんがね。ここは今いっちばんキレイなところだって連れてきてくれたんだ!」 「んだか」 目をきらきらさせながらそう言う悟飯にチチはにっこり笑いかけた。 「ホントにキレイだなぁ」 「でしょう!?」 すると、筋斗雲の上から二人を眺めていた悟空が楽しそうな口調で言った。 「チチ」 「あ、悟空さ」 「散歩行こうぜ。ほれ、乗った乗った」 悟飯を抱いたチチを悟空がひょいと抱え上げて筋斗雲に向かって叫んだ。 「そんじゃよろしくなー、筋斗雲―――――ん」 ―――たまにはこんなのもいいモンだなぁ…。 悟空の台詞に緑の中を静かに飛び出う筋斗雲の背中で、悟飯を腕の中に、悟空の腕の中でチチはそんなことを考えていた。 〈おわり〉 |
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