2001年12月 |
「っくっそー。何で俺がこんな日にお使い行かされんだよー」 ぶつぶつと口の中で文句を言いながらも、結局出掛けることになってしまうのだ。 いい加減諦めた方が良い。、 ひととおりの防寒をすませると仏頂面のままで寒さの中へ飛び出す。 「何だよ!ちょっと飲んだぐらいであんなに怒鳴ることねぇだろ、くそ親父!!」 口をついて出るのは文句ばかり。 ことの発端は簡単だ。 バーダック秘蔵の酒をカカロットがこっそり飲んでしまったのだ。 見つからなければ――いや。見つからない筈がない。 判っていたのかいなかったのか、案の定あっさりバーダックに見つかり大目玉を食らった上に、この寒い日に外へおん出され……というのは人訊きが悪いが、代わりの酒を買いに行かされることになったという訳だ。 「あー。さみさみ〜」 ポケットに手を突っ込み背中を丸めて地面だけを見つめて歩く。 幸いなことにこの寒さで人通りも少なくて周囲を気にする必要はなかった。 すると。 道ばたに、ぽつん と置かれていた箱の中で、もこもこ と動く茶色い物体が目に入ってきた。 「ん?何だ?クマか?」 モチロンこんな処に熊がいたら驚きである。 近づいて箱の中を覗き込むと、そこにいたのは茶色の仔犬達。 「クマ…じゃねぇな。仔犬か?」 箱の中を覗き込まれたことが判ったのか、キュンキュン と鳴きながらごそごそと動き回っている。 何となく箱の前で立ち止まったカカロットは動き回っている仔犬に手を伸ばした。 茶色の毛、丸い体、丸い耳。確かに小さい今ならばクマのようにも見えるだろう。 「いててっ」 無防備に手を出したカカロットの指に仔犬が噛みついた。カカロットに敵対した訳ではなく、小さいながらも本能で噛みついたのだ。 しかしカカロットの方は噛みつかれたことをあまり気にする様子はなく、平気な顔で仔犬を抱いた。 「お。もこもこであったけーなーお前ら」 いきなり抱えられてしばらくはカカロットの腕の中でごそごそと動き回っていた仔犬達も次第に大人しくなっていく。 ふと思いつきポケットの中をごそごそ探るが願った物は出てこない。 「ちぇっ。綺麗に洗濯できてんなー」 カカロットはポケットに何も入っていなかったことに文句を言いながら仔犬を抱えたままで歩き出した。 躊躇いもせずに入った店で迷いもなく買ったもの。 ――それは、2色のリボンだった。 「ちょっとこいつ、押さえててくれるか?」 当然のようにレジのカウンターに仔犬を乗せ、店員に手伝わせてリボンを2匹の首に巻いてやる。 「これでよしと。けっこう可愛いじゃんか」 満足げに呟きながら店を出るカカロット。 そしてカカロットは当初の目的をすっかり忘れて家路に着いたのだった。 「バカヤロー!何しに行ったんだ、お前は!?」 「あ。忘れてた」 家に着くなりバーダックにもの凄い剣幕で怒鳴られ、カカロットはようやく買い物の目的を思い出した。 「酒だったな。酒。もう一回行ってくる」 「何考えてんだ、全く」 呆れ顔のバーダックを残して仔犬を抱いたままのカカロットが再び家を出て歩き出したとき、ぺろり と仔犬がカカロットの鼻の頭を舐めた。 「うわ。何だよ。やめろよ。冷たてぇじゃんか」 仔犬から顔を遠ざけようと空を仰ぐ。 すると。 「あ…。雪だ」 飽和状態になった空からふわりふわりと雪が舞い始めたのだ。 雪を合図にするかのように腕の中でまたごそごそと仔犬達が動く。 カカロットは仔犬達が寒くないようにと抱え直して歩く速度を早めた。 「ホントあったけーなー、お前達」 〈おわり〉 BY:大沢 |
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