2001年8月 |
パンパンパン ドド――――――――――――ン 祭りの醍醐味はやっぱ花火だよなぁ。 俺がそんなことを考えてると。 「うひゃーーーーーー!!すげーーなぁーー!!きれーだなぁーー!!」 「うん。でかいなぁーー!」 悟空の声に俺も思わず声が出た。 俺の隣で目を輝かせて花火を見上げてる悟空の手には、もう既にいろんな食べ物が握られている。 さすがの俺もこんなにいっぱいは食べられないってカンジだ。 「な?な?すげぇよな?」 「ああ。すげぇな」 考えてみたら俺は子供のときに多林寺に入門したから夏祭りの記憶、ないなぁ。 いつだったか。 カメハウスに修行に来ていた悟空と話をしているうちに、二人とも「夏祭り」に行ったことがないって話になった。 修行って言ったって武天老師さまはもう俺達に教えることはないっておっしゃってるから、俺にしても悟空にしても、老師さまの顔を眺めに行くようなモンだけど。 そんなこんなで島の夏祭りがあると教えてもらった俺達は、早速出掛けたって訳だった。 ――モチロン、話を訊いて悟飯も悟空と一緒に行きたがった。 悪いな。 とは思ったけど、今回ばかりは俺がムリ言って悟空だけを引っ張り出した。 いいじゃんか。たまには。 「ひゃーー!祭りって楽しいんだなぁ。オラこんなの初めてだから何見てもすんげぇわくわくするぜ」 「俺もだ」 「そうだよな〜。良いよな〜。祭りっ!!」 「うん。何か小さい頃から修行しててソンしたような気がするな。 ま。大人になってから来てみるってのも結構おもしろいけどな」 そんなこと言ってる間に花火も終わっちまって、 「あーあ。もう終わりかぁ〜」 と、悟空がつまらなそうな声を上げた。 つまんないのは俺も同じだったけど、 「よし!今度はナニ食うかな!」 「げ。お前、まだ食うのか???」 「なに言ってんだ!まだまだこれからじゃないか!!」 ばんばん!! 「いててててて。全く……お前は相変わらず良く食うんだなぁ」 「そうかぁ?」 そう言ってきょとんとした顔になったのは一瞬で、次の瞬間にはもう屋台の匂いに誘われて歩き出していた。 ――そういえば昔はこいつのこと出し抜こうって必死だったなぁ。 くっくっくっくっ 「何だ?何笑ってんだ?」 「え?あ。いや。何でもないなんでもない」 掌を振って笑う俺に、不思議そうな目を向ける悟空。 俺は何だか笑いが止まらなくなった。 あれ。視界が歪んできた。 きっと、涙が滲んでるんだろう。 涙を堪えようと逸らした視界の端を、チビの俺と悟空が掠めて行った。 幻だ。たぶん…。 でも、懐かしくて嬉しかった。 あの頃の俺達も夏祭りに来ることが出来たんだなって。そう思えたから。 〈おわり〉 BY:大沢 |
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