2001年6月 |
「何だいっ!兄ちゃんのウソつきっ!」 ボクが叫ぶと兄ちゃんは困ったように笑いながらボクの頭を撫でたあと、慌てて部屋を飛び出して行った。 「ちぇっ。兄ちゃんなんか、べぇーだ!!」 「何だ何だ。どうした、悟天?」 「あ。お父さん」 ボクが兄ちゃんの飛び出したドアに向かってあっかんべーをしていたら、お父さんがひょいと顔を出して、目を丸くした。 う。何だかお父さんにあっかんべーしたみたいじゃんか。 「あのねあのね。お父さんあのねっ」 ボクは急いでお父さんに飛びついた。だって、お父さんにあっかんべーしたんじゃないって説明したかったんだもん。 「ふーん。そっかー。今日は悟飯と森で遊ぶ約束してたんかー」 お父さんはボクの説明を頷きながら訊いてくれた。 良かったー。ボクのことキライになったりしてないよね。 「でもよ。チチがいつも「べんきょするのが悟飯の大ぇ事な仕事だ」って言ってるだろ。淋しいかもしれねーけどオラも我慢してんだから悟天も一緒に我慢しよーな?」 「?うん」 良く判んないけど、お父さんも兄ちゃんと遊びたかったのかな? ボクが首を傾げると、お父さんはにっこり笑ってボクを抱き上げてくれた。 「良し。悟天ッ!悟飯の代わりにオラと遊ぼうな!」 「うん!!」 やったーーー!! お父さんが遊んでくれる?それなら兄ちゃんなんて目じゃないや!! ボクはお父さんの腕から飛び出して台所にいるお母さんに声を掛けると、外からお父さんの声がした。 「おぉーい、悟天!早くしろぉー」 「はぁーーーい。お母さん、行ってきまーーす!!」 飛び出した僕達に向かって、お母さんが何か叫んだみたいだったけど、筋斗雲のスピードと風の音で全然訊こえなかった。 ヒューーーーーーーーーーーーーーーン いつ乗っても筋斗雲って気持ちいいなー。 「どうだ?いい気分だろ?」 「うん!!」 そんなこと言ってたらあっという間に森に着いちゃった。 ホント、筋斗雲って早いんだよなー。すごいすごい!! 「緑がいっぱいだねー、お父さん」 ボクはお父さんの背よりずっとずっと高い木を見上げたり、歩きながら踏んでいる草を見回して言った。 「そうだなー。今は緑が一番キレイなときかもしんねぇな」 ボクの顔を見てお父さんはにっこり笑ってそう言った。 「あ。お父さん、あれ何だろう?」 「どれだ?――ん?何だぁ?」 ボクは足元の草の奥にキラキラ光るモノを見つけてしゃがみ込んだ。 お父さんも地面に顔を近づけるようにして覗き込む。 そぉっと。ボクはそぉっと手を伸ばした。 「へぇ〜。珍しいモン見つけたな、悟天」 「珍しいの?コレ」 「おお。持ってるとな、良いことがあるって言われてんだぞ?」 「へぇ〜」 ボクはもう一度手の中のモノをまじまじと見つめた。 コレがホントにそんなに凄いものなのか、今のボクには判んなかったけど、お父さんと一緒に見つけたんだからそれだけで立派な宝物だと思った。 「ボク大事にするよ、コレ!」 ボクがそう言ってにっこり笑うと、お父さんもにっこり笑ってくれた。 〈おわり〉 BY:大沢 |
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