2001年4月




 ひらひらひらひら
「あ。桜だ。チチ、桜が咲いてるぞ」
 家の中に入り込んできた桜の花びらを見て、悟空さが子供のようにはしゃいでる。
 その姿を見ているオラは、たぶん今までにないくらい穏やかな顔してると思う。
 オラと悟空さが天下一武道会の武舞台の上でケッコンしてから1年が経った。
 1年の間にはオラの知らない悟空さも見て、悟空さの知らないオラも見られて。
 でもそうやって少しずつ夫婦ってモンになっていくんだなって感じてる。
 そんなことを考えてたら、悟空さが不思議そうな顔で言った。
「今日のチチは何か優しい顔してんなぁ」
「何だ?それじゃあオラはいつもおっかねぇ顔してるみたいじゃねぇか」
 オラがそう言いながらちょっと詰め寄ると、
「え。あ、いやそういう訳じゃねぇけどさ〜」
 悟空さは困ったように頭を掻いた。
 オラはその様子に思わず笑っちまった。
「良いだよ。それよりオラ、悟空さにお願いがあるんだ」
「お、お願い…?」
 お願いと言われた悟空さは先刻より困ってる。そんな顔も可愛いなぁ〜。
「んだ。あのな、オラお花見に行きてぇんだ」
「お花見ぃ〜?何だそれ?食いモンか?」
「またそれか?――まあでも似たようなもんだな。弁当持って桜の花を見に行くんだ。
花がキレイに咲いてるとこに連れてってくれねぇか?」
「弁当!?行く行く!いつだ?今からか?」
 弁当と訊いた悟空さは急に元気になった。やれやれ。現金な人だべ。
「何言ってるだ。今から悟空さが満足するだけの弁当準備できる訳ねぇべ」
「そりゃそうか。じゃ、いつ行くんだ?」
「そうだなぁ。ゆっくりしてて花が散っちまったらイヤだから明日にするかな」
「明日だな。やっほー!チチの作るメシはうめぇから楽しみだなぁ〜」
 くすくすくす
 何言ってんだ。くすぐったいじゃねぇか。
「判っただよ。悟空さの好物た〜んと作るからな。楽しみにしててけれ」
「ひゃっほ〜い!!!」
 さあ。明日は朝から大忙しだぞ。頑張ろうな。

 次の日。何人分もあるような弁当とオラを軽々と抱えた悟空さは、ひょいと筋斗雲
に乗った。
「よっし!じゃあ花見に出発だぁ〜」
 その声に答えるように筋斗雲は静かに、でも風のように飛ぶ。
 悟空さが何も言わなくても筋斗雲には全部判ってるみてぇだ。
「着いたぞ。――どうだ?チチ」
「わぁぁぁ〜」
 そこは桜の森だった。沢山の木が競うことなく立っている。
 満開の桜。風が吹くたびに白い雪のように静かに散る花びら。
 そこだけがまるで夢のように淡く儚い色を放っていた。
「……悟空さ」
「ん?どうした?気に入らねぇか?」
「キレイだな…」
 そう呟いたオラの顔を見て、悟空さはまた不思議そうな顔をした。
「やっぱりチチの顔が違うなぁ」
 オラには悟空さがそう言う理由(わけ)に気付いてる。
だって……。
「なあ悟空さ。来年もきっと3人で来ような」
「?3人で??」
 一瞬ぽかんとしていた悟空さも、オラの台詞の意味が判ったようだった。
「チチ!」
 いきなりそう叫んだ悟空さは、オラを抱きかかえるとくるくる回りだした。
「そうか。お前ぇ、母ちゃんの顔になったんだな」
「喜んでくれるだか?」
「あったり前ぇじゃねぇか!!」
 くるくるくるくる
 悟空さは回る。オラをしっかりと抱きしめて。
 ひらひらひらひら
 花びらが降る。オラ達の上に。
 白い白い雪のように。

〈おわり〉

                                        BY:大沢






笑えることに。
このTOP絵をUPして2,3日でこのショート小説を送ってきたよ。相棒は。(爆笑)

その速攻振りに脱帽。さすがは本命悟チチ派。

3月ショートを書くより先に送ってくるあたりが、らしくって笑えたわ。(^_^;)
何だか、この絵と似たような小説をちょっと考えていたらしくってね。
見たときに思わず握りこぶしだったそうな。
ううむ。さすがは、二人羽織の私たち。(笑)

それにしても。
幸せそうだのう。この2人。桜の花ってのがまたイイ感じ出してるでしょ?
AOIはそこまで考えてなかったんだけど、愛人くんは新婚さん話にしてくれました。
幸せな悟チチ。AOIも大好きです。(*^-^*)





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