そんな風に思う、日常
『大好きだぞ』…そんな不確かな言葉。 ときどきその言葉を嬉しそうに、恥ずかしそうに言う目の前の男を何の気なしに見ていた。 …視線に気付いたのか、こっちを振り返ってにっこり笑う。 そんな時のこいつの表情はただただ『うれしい』と語って聞かせているようだ。 見ていて気持ちのよい笑顔につられて少し微笑って名前を呼んでみる。 「…悟空?」 「…どした?」 話し掛けながら自分の隣に座る悟空の髪に手を伸ばし、くしゃくしゃ混ぜながら問うてみる。 「…言葉に、確証があると思うか?」 「…あン?」 悟空は何を言われたのか分からないというように変な表情を浮かべ、自分の顔をまじまじ見てくる。 「熱あんじゃねえか?」 …失礼な。まあそれはいいとして。 「お前が良く口にする『スキ』という言葉はどこまで意味のあるものかとおもっただけだ」 つまらんことを聞いた、と水でも飲みに行くかとその場から立ち上がった…ら。悟空はどこかつまらなさそうな表情で同じように立ちあがり、俺を呼び止めた。 「確証がねえっての?そんなんオラだってあるとは言い切れねえよ。…だけどな…」 急にいたずらを今からしますといいたげな表情を浮かべ、俺の胸ぐらをつかんで、引き寄せて。 「…!」 「オラはこれくらいは確証、もっていたいぞ♪」 …あっそ。 そんな気分に思わずになってしまった。 くだらんことを考えていた自分がくだらんじゃないかと思ってしまうほど、悟空の答えは単純だった。 …まあ、それも悪くないだろう。そんな風に思う、天気のよい午後だった。 そして、こんな日常があっても悪くないだろう。そんな風にも思える笑顔に、俺は思わず苦笑した。 何だか嬉しそうに浮き足立ってる男の名をもう一度呼んだ。 「悟空」 「…ん?」 自分からはめったに言おうとは思わない、言葉。それを音に紡いだ。 『俺もお前がダイスキだ』 悟空の表情は…言うまでもない。
Fin. by NO.5
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